入門から各テクニックの習得まで

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9. 実践

ここまでFMCの導入から様々なテクニックの使い方まで解説してきました。 FMCを始めた頃は1時間も探すほどの分岐がまず見つからなかったと思います。 しかしこれだけ色々なテクニックが使えるようになると分岐が多すぎてとても1時間では足りなくなります。 その中でいかに効率よく少ない手数でスケルトンを作ることが出来るかが一番難しい技術であり、説明も難しいところです。 ここでは前半と後半に分け、前半は時間の使い方や戦略の取り方など、後半は実際のスクランブルとその解答に焦点を当てて説明します。

時間の使い方と戦略
まずルールとして、キューブが3個までと主にコミュテータをインサートする時に目印として使うステッカーや付箋と後は時計を持ち込むことが出来ます。 そして大会ではスクランブル、その展開図も印刷された解答用紙TRCC様より)とメモ用紙が配られます。 さて持ち時間60分の使い方ですが、コミュテータのインサートを1回だけする場合と2回以上する(追加のテクニック参照)場合と全くしない(使えない)場合でかなり変わってきます。 ただ序盤の進め方は共通しているのでそこから説明します。
※もちろん個人によって全然違うのでここでは筆者自身と周囲の人の話を聞いた感じを合わせて紹介します。
こちらでmorooka氏がFMCの競技の流れについて説明されていますので一緒にご参照ください。

開始~2x2x2ブロック
試技が始まると、まずはインバーススクランブルをメモします。 これはNISSを使う度にノーマルスクランブルを逆再生させるのは時間がかかり、ミスも起きやすいからです。 もちろんそのメモも間違わないように注意しないといけません。
※ちなみに筆者はスクランブルを逆再生するスピードと正確さにそこそこ自信があるので、時間短縮のためにインバーススクランブルは書いていません。 上級者では書かない人の方が多いみたいです。

ここからはとりあえずノーマルスクランブルでブロックを作っていきます。 最初からペアがある場合はまずそれを生かして2x2x2の(疑似)ブロックを探し、見つけた短めの手順をいくつかメモしておきます。 それが疑似ブロックの場合はPremoveの手順も書いておきます。 また1手でペアを作りそこから簡単にブロックを作れることもあるので、1手でペアが出来る場合はその方向でも調べます。 1手ペアがたくさんある場合はその1手だけ最初にメモしてもいいと思います。

同じことをインバーススクランブルに対しても行います。

~F2L-1
2x2x2ブロックを作ったらそのまま2x2x3さらにF2L-1へ拡張していきますが、ブロックやペアの使い方によっては別の拡張方法もありうるのであくまでも柔軟に対応します。 まずは手数がより少なくブロック作成時にペアがあるなど繋がりやすそうなものから試していきます。 2x2x2作成の1,2手前に1手インサートをすると上手くペアが出来るかもしれません。 そして2x2x2→2x2x3でもPremoveが使えますし、2x2x3→F2L-1でももちろんPremoveが使えるので視野に入れておきます。

続かなさそうならブロックを作った段階orペアが出来た段階でNISSを使ってみましょう。

ここで大事なのはF2L-1を作る上で残りのエッジの向きも考慮しておくということです。 具体的にはなるべくF2L#4のパーツを反転させて埋まらせないLLのエッジを全反転させないことが大切です。 この後の手数に大きく影響してきます。

~スケルトン
準備中

例題スクランブルと解
とりあえず3つ例としてスクランブルと解を挙げておきます。
また最後のスクランブルに関しては、筆者が実践でどのように思考しているかを1時間まるまる撮った非常――――に長い動画がありますので暇な人は見てみてください。 (動画では文章で表現しづらい実践的内容がたくさん含まれていると信じています。)


例1

Scramble: R' U' F D F2 L2 D' U2 B2 L2 B' F U' L2 D2 B2 D2 R D2 L2 F U' R' U' F
tribox Contest 2016 後半期 第8節より)

まずはノーマルスクランブルで2x2x2ブロックを目指します。
ceペアが3つあるのでそこから上手くブロックを作れないか試行錯誤したところ、黄青エッジが正位置に入っていることを利用して U2 F2 U2 R2 でDRB側に疑似ブロックが出来ました。
ここで一旦揃えてからPremove: R2 してもう一度ここまで再現します。
ブロックを拡張するために U2 F' L で1x2x2の小ブロックを作ります。
さらにU すると黄橙青もいい位置関係になり、黄色クロスチックに一気に揃えます。
黄緑橙のブロックをF2で逃がし(F'よりもこっちの方が都合良かった)、B L2 B' L F2 でF2L-1まで完成しました。
ここから U F' U' F すると簡単にF2Lが終わるのですがその後が続かなかったので作戦を変え、U' R U' R' して先に白面に1x2x2のブロックを作ります(さっき紹介したやつ!)。
あとは揃ってないエッジ3点を揃える手順 F R' D R' D' R2 F' を回すとコーナーが1個たまたま揃ってコーナー3点を除いてスケルトンが完成しました!

ここで筆者の解答(解説)を貼っておきます。
大会では最終解答を書くだけなのでこの解説の記法に決まりはありません。

Premove: R2
U2 F2 U2 R2 / 2x2x2
U2 F' L / +1x2x2
U F2 B L2 B’ L F2 / F2L-1
U' R U' R' / +1x2x2
F R' D R' D' R2 F' / L3C
Skeleton: U2 # F2 U2 R2 U2 F' L U F2 B L2 B' L F2 U' R U' R' F R' D R' D' R2 F' R2(26手CP3)
Insert at #: U2 B' D' B U2 B' D B(2手キャンセル)
Final Solution: B' D' B U2 B' D B F2 U2 R2 U2 F' L U F2 B L2 B' L F2 U' R U' R' F R' D R' D' R2 F' R2(32手)

読み方はもう大体わかると思います。
L3Cは3つコーナーを残して揃えたという意味で、その下のスケルトンがコミュテータ未挿入の解答です。
26手CP3とはスケルトンが26手であとはコーナーが3点で入れ替わっていることを意味します。
この時点で正確な最終手数はわかりませんが、これが1つの指標にはなります。
そしてスケルトン中の#にコミュテータ手順を挿入します。
スケルトン後では入れ替えたいコーナーはDBR→URB→RFDですが、#ではULF→URB→BRDになっています。
ここにコミュテータ手順を挿入すれば直前のスケルトンU2と最初のインサート手順U2が相殺され2手キャンセルとなります。


例2

Scramble: R' U' F U L2 U2 L2 U' F2 L2 B2 U F' L U F D' F' R2 B U2 R' D' B R' U' F
tribox Contest 2016 後半期 11節より)

まずは2x2x2を作るのですが、Bで白緑赤のペアができ、黄青エッジが正位置に入ったので U' R U R で疑似ブロックを考えました。
そこでPremove: R2で再び作っていると D2 L2 D R2 F' というブロックも見つけ、最終的にこちらで進めることになります(これはPremove前では絶対気づきませんでした)。
この時点でペアがたくさんあって悩んだのですが、L2 B2 D2 B' D' で緑クロス的な疑似F2L-1ができました。
ここから上手く繋がらなかったため、インバーススクランブルにスイッチします。

Scramble: D B D2 B2 L2 F R2 D' L2 D2 + F' U R B' D R U2 B' R2 F D F' U' L' F U' B2 L2 F2 U L2 U2 L2 U' F' U R

ここからPremoveの分のR2を回すと同じく疑似F2L-1の状態になります。
次に B L でF2L-1C(F2Lから1つだけコーナーが入っていない状態)になりました。
そしてAUF: B から6手OLL: D B L B' L' D' でエッジだけ揃えるとコーナー5点交換が残ってスケルトンの完成です。
ちなみにAUFとOLLの順番を逆にすると、OLL最初の手順が直前と重なり1手キャンセルされますが、あえてAUFを先に回しました(理由は後述)。
正方向にスケルトンを整理すると、

Skeleton: D2 L2 D R2 F' L2 B2 D2 B' D' + D L B L' B' D' B' L' B' R2

となり、結合部分で2手キャンセルされました。
PremoveやNISSを使うとこのようにスケルトンでキャンセルできる場合もあります。
今回はインバーススクランブルでOLL手順を回した時に先にAUFをした結果こうやってキャンセルが引けたように、AUFをどこで挟むかでも変わってくるので注意してください。
またこの差によってCP3のインサート手順も変わり、キャンセル数も変わる可能性があります。
時間がある場合は両方のスケルトンからインサートした方がいいでしょう。
CP5の処理は実はCP3の処理を2回することで出来ます。
この解説は後の追加のテクニックのところで説明しています。 最後に解答を載せておきます。

Premove: R2
D2 L2 D R2 F' / 2x2x2
L2 B2 D2 B' D' / F2L-1
Switch to Inverse
R2 B L / F2L-1C
B D B L B' L' D' / L5C
Skeleton: D2 # L2 D R2 F' L2 B2 D2 B' L B L' B' D' $ B' L' B' R2(18手CP5)
Insert at #: D' R' D L2 D' R D L2(4手キャンセル)
Insert at $: L B' R' B L' B' R B(2手キャンセル)
Final Solution: D R' D L2 D' R D2 R2 F' L2 B2 D2 B' L B L' B' D' L B' R' B L' B' R L' B' R2(28手)



例3

Scramble: R' U' F D B2 D F2 D L2 F2 D B2 U' B' U R2 F L D R' U F R' B2 R' U' F
tribox Contest 2016 後半期 21節より)
Inverse Scramble: F' U R B2 R F' U' R D' L' F' R2 U' B U B2 D' F2 L2 D' F2 D' B2 D' F' U R

まずノーマルスクランブルで黄緑橙のペアを見つけたので、そこから2x2x2への拡張を考えました。
F D' B2 F D や D' F L2 U' L2 や U B' U'(Premove: B2 D)のような5手ブロックを見つけましたが続かなかったのでインバーススクランブルでブロックを考えることにします。
こちらでは白青赤ペアから D B' D2 B2 の4手2x2x2を見つけ、D F' D' F2 D2 と L' D L F' D F' の拡張で進めて後者を採用しました。
ここから黄橙緑ペアを利用して L F L F' で疑似F2L-1を作り、さらに D L' で疑似F2Lができました。
ここで6手OLL: L B D B' D' L'(前の手順とキャンセルもしてめちゃくちゃラッキー)するとAUF: L2 でCP3に持ち込めスケルトンが完成しました。
あとはコミュテータのインサートをして終了です。
最後に解答を載せておきます。

(Inverse)
D B' D2 B2 / 2x2x2
L' D L F' D F' / 2x2x3
L F L F' / F2L-1
D L' / F2L
L B D B' D' L / L3C
Skeleton: D B' D2 B2 L' D L F' D F' L F # L F' D B D B' D' L(20手CP3)
Insert at #: U R' U' L' U R U' L(1手キャンセル)
Final solution: L' D B D' B' D' F L2 U R U' F' L' F D' F L' D' L B2 D2 B D'(27手)



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