入門から各テクニックの習得まで
7. Commutator
コミュテータというテクニックはPremoveやNISSとは全く系統が違い、LL以降の完成に最も近いところで使用する言うなれば一番重要なテクニックと言えるでしょう。 ここまでPremoveとNISSを解説してきましたが、特にNISSは使いこなすのに苦労するかもしれません。 しかしこれらはあくまで分岐を増やすものであるので習得は後からでも構いません。 一方でFMCらしくするためにLLで大幅に手数を削りたいのであれば確実にコミュテータの習得が必要になります。 しかもほぼ毎回使うことになるので、最優先すべきテクニックと言えます。コミュテータとは
コミュテータとは、特定のパーツだけ思い通りに入れ替えることができる、一気に色々動いてしまう立体パズルのイメージを根底から覆すような理論です! しかも3x3x3に限らず、あらゆるパズルで使える万能性も備えています。 そのため、FMCだけでなくBLDやLL手順などにも幅広く利用され、身近な存在でもあります。 もちろんWRCCの誇るBLD解説のページにも度々出てきます! そして、コミュテータの解説もTRCC様など各FMC解説のページをはじめBLD解説のページでも盛んに登場し非常に充実してきているので、そちらも参考にしていただくとより理解が深まると思います。それではFMC向けにコミュテータの解説を進めていきます。 ここの項ではコーナーの3点を入れ替えるコミュテータに限定します。 簡単に言うと任意の3点だけを8手で自由に入れ替えることができます! コーナー4点以上の交換やエッジのコミュテータなども後々必ず必要になってきますが、それらは追加のテクニックで紹介しています。
まずはコミュテータを使えることのメリットですが、例を1つ挙げます。

(tribox Contest 2016 後半期 第12節 + Premove: D2)
まず F2 L B' で2x2x2ブロックができます。 次に U R2 U2 で疑似2x2x3ブロックができます。 そして F R2 U で青クロスのF2L-1まで完了しました。
さてここからですが、F2L#4をきっちり処理すると手数がかかってしまうのであえて R F R' でエッジだけ揃えLLに進みます。 この時点でもうLL手順を使っても完成はしないのですが、緑色に着目してそれっぽいOLL: U L F L' F' L F L' F' U' を回し、AUF: F' するとどうでしょう。 緑の面がほぼ揃い(これはOLLを色々回して偶然見つけました)、結果的にコーナーが3つだけ入れ替わっている状態、3CPになりました。
完成状態を作るのは手数がかかってしまうので、コミュテータを使える人はこのようにほぼ完成していてあと数パーツ入れ替えればいい状態を目指しています。 この程度の完成度であれば律儀にF2LやLL手順を回す必要もなく、短い手数のもので色々なパターンを試すことができます。 ここまででもかなり手数が省けることは明らかでしょう。 後はこれらの入れ替わっているパーツにコミュテータを適用して完成です!
コミュテータ手順の作り方
それではコミュテータの手順の作り方を説明していきます。 まず3点を入れ替える原理ですが、次の
ここではコーナーX(場所A), Y(場所B), Z(場所C)に対してAとBにあるパーツを交換できる操作P(円盤の回転)と、BとCにあるパーツを交換できる操作Q(棒の左右移動)があるとします。
1、操作PでAとBのパーツを交換します。(A: Y, B: X, C: Z)
2、操作QでBとCを交換します。(A: Y, B: Z, C: X)
3、操作Pを戻してAとBを再び交換します。(A: Z, B: Y, C: X)
4、操作Qも戻してBとCを再び交換します。(A: Z, B: X, C: Y)
操作としてP Q P' Q' と表せますが、これによってコーナーX, Y, Zを入れ替えることができました!
原理はすべてこうなっていて、後は臨機応変にPとQの操作を回転記号に充ててやるだけです。 次は具体例です。

これで今の操作(P Q P' Q')をやってみてください。 手順としては R U R' D R U' R' D' となります。 これによりコーナー3点がRUF→DRF→DFLと移動したのがわかったでしょうか?
実際は場所だけでなく向きも重要で、これはRUFのR面ステッカーがDRFのD面ステッカーへ、そこのパーツはさらにDFLのD面ステッカーに移動することを表しています(右図)。 先ほどのコミュテータの図に置き換えると、RUFを場所A、DRFを場所B、DFLを場所Cに割り当てています。 これらの3パーツの動きを確認すると、R U R' によってDRFのところへRUFのパーツが移動し(DRFに元々あったパーツはU面に逃げる)、D でDRFのところへDFLのパーツが移動し(DRFに元々あったパーツはD面でずれる)、R U' R' と D' で元に戻っていくのがわかると思います。
ここで1つ、「コーナーが3点で交換されることはわかったけどなぜ他の部分は崩れないのか」という疑問が上がると思います。 実は3点交換のコミュテータを成立させるには条件があります。 2操作それぞれで入れ替えたいパーツを共有している場所(上の図でいうB、例だとDRFコーナー)がありますよね? その場所以外において2操作それぞれで動きうる場所が重なってはいけないという制限があります。

コーナーを3点交換させる場合、上の条件を満たす手順は無限に存在しますが、例でも挙げた3手と1手の操作による8手のものが最短で考えやすく(ピュアコミュテータといいます)、これだけでも全交換パターンの3分の1ほどカバーできます。 そこで、FMCではこのピュアコミュテータのみ使用します。 ちなみに逆に言うとコーナー3点が残った時点でピュアコミュテータが使えない位置関係の時もありますが、Insertの項で説明するので心配はしないでください。
続いて目的の3点についてこのピュアコミュテータが使えるかどうか、使えるならどういう手順になるかの見つけ方です。
まず1手である点からある点に移せるインタァチェィンジャボゥ(interchangeable)な位置関係があるか探します。
※これをインターチェンジといい、それによって回る面をインターチェンジ面といいます。
※90度でも180度でも構いません。ただしその時にもう1点を巻き込まないようにする必要があります。
先の例でもRUFとDRFは1手で交換可能ですがインターチェンジ面がFになりDFLも巻き込んでしまうため、これでは使えません。 一方でDRFとDFLも1手で交換可能であり、これだとインターチェンジ面はDなのでRUFは巻き込まずコミュテータが使えます。
次にインターチェンジ面にはないもう1つのパーツを3手でインターチェンジ面上の移動させたい行先に運ぶ操作(インサートといいます)を考えます。 この時に注意しなければならないのは、その3手によって行先のパーツ以外でインターチェンジ面を崩してはいけない点です。 といっても先の例で R U R' が採用されているように、インターチェンジ面をD面に持ってくると3手F2Lの要領でインサートできるので難しく考える必要はありません。
※つまり、インタァチェィンジャボゥな面が存在しても3手F2Lの要領で入らない位置関係の場合は8手コミュテータを作ることはできません。
今後、3点交換の図ではインタァチェインジャボウなパーツは赤、インサートするパーツは緑で表します。

右図のような場合は3手のインサートは不可能です。 ちなみにこれは例えば R2 U R2 U' R2 など5手でインサートすることはできますがFMCには不向きです。 このようにしてインターチェンジ面とインサート手順が決まり、3点交換手順を生み出すことができます。
また、ここまではインサート→インターチェンジの順で考えましたが実は逆でも成り立ちます。



また、FRU→DRF→DFLの交換(上図)では、D面インターチェンジ(F' U' F D F' U F D')とR面インターチェンジ(R' D' L' D R D' L D)が考えられこちらも2つのピュアコミュテータ手順が存在します。
長くなりましたがこれでピュアコミュテータ手順の作り方がわかりました。
FMCの解答として実際に埋め込む方法は次のInsertの項で説明します。
例と補足
以下にピュアコミュテータの手順をいくつか挙げておきます。例
図 | 交換 | 手順 |
![]() |
LFU→DRF→DLB | R U' R' D2 R U R' D2 |
![]() |
BRD→LFU→LDF | U' R2 U L' U' R2 U L or L F' R F L' F' R' F |
![]() |
RFD→UBL→ULF | B D2 B' U B D2 B' U' or U' L D' L' U L D L' |
![]() |
DFL→BDL→BUR | D F D' B2 D F' D' B2 or B2 R' F2 R B2 R' F2 R |
最後に筆者の解説動画を載せておきます。