BLD解説

Dedicated to ミッシェル・K・Davis...

本解説は,Speedcubing Advent Calendar 2014 の20日目の記事ですが,WRCCの皆さんには専門必修です. 19日目はCubeVoyageさんの「アドバイスシリーズ「○○秒が切れない人へのアドバイス」」でした.

目次

†DFバッファ解説†

ここでは,目隠し競技のエッジ解法においてM2法を使用している方を対象に,3-styleへと気軽に移行できるようにすることを目的としている.M2法で出てくるとどうしても手数が多くなってしまうM列手順 (ここで対象となるfu*ckなM列は FU, BU, BD) に関しては,すぐにでも3-cycle手順に変更することをお勧めする (これらが関わる手順の総数は 114通り[森川調べ]) .M2法の原理を理解していれば,いずれの手順に関してもその場ですぐに生成することが可能になるであろう.また,エッジはミラー手順が使えるのでとても楽である.

そこでまずは,M2法で出てくるものを例にとり,エッジコミュテータを導入しよう.これ以降登場するコミュテータの表記に関しては,こちらを参考にしてもらいたい.

本記事で登場する図において,赤色interchangeableインタァチェィンジャボゥなパーツで,緑色インサートすべきパーツとなっている.

例.DF → UB → FR → DF

DF-UB-FR

M2法でこれが出てきた場合,すぐさま M2 U R U' M2 U R' U' を回すと思う.これが最も基本的なコミュテータ (ピュアコミュテータ)である.M2法の場合,UBが絡むサイクルの大部分はこのようなピュアコミュテータになっている.

コミュテータは,インターチェンジとインサートと呼ばれる2パートから成り立っている.インターチェンジとは, M2 U R U' M2 U R' U' における M2 (=A と呼ぶ) のことであり,インサートとは,U R U' (=B と呼ぶ) のことである.これによりコミュテータは,A B A' B' の形をしていることがわかる. この観点で先ほどの手順を眺めると「DF は UB と A でインターチェンジ可能な位置関係にあり(以後 interchangeableインタァチェィンジャボゥ とかく),B により FR を UB へインサートする.あとは A' B' のように回す」という風になる.

ここで注目すべきことは,M2法では必ずDF と UB が M2 によってinterchangeableインタァチェィンジャボゥになっており,何かしらのパーツを UB へインサートしているということである. 何かしらのパーツを UB へインサートするための手順はよくご存知のものであると思われるが,一応下にまとめておく.ただし,今回の解説で必要となるインサート手順のみに留めておく.

Edge Insert (Insert)'
UR R' U R U' U R' U' R
UL L U' L' U U' L U L'
FR U R U' U R' U
FL U' L' U U' L U
LF B L2 B' B L2 B'
LD B L B' B L' B'
LB L B L' B' B L B' L'
LU B L' B' B L B'
BL U' L U U' L' U
BR U R' U' U R U'
RB R' B' R B B' R' B R
RD B' R' B B' R B
RF B' R2 B B' R2 B
RU B' R B B' R' B
DR U R2 U' U R2 U'
DL U' L2 U U' L2 U

M2法をマスターしている方ならば,この表のインサートとその逆手順は手が覚えていることだろう.

次からはいよいよ,このM2法の原理を応用して憎きM列手順へ逆襲を始める.

この解説で扱うエッジコミュテータを手っ取り早くモノにするためには,インターチェンジが何であるかを意識し,分類されたインサートのパターンに最大限注意しながら,実際にキューブを回すことである.頭フルスロットル!!!!

ヽ( ▼∀▼)ノ フォー!!

†DF-FU インターチェンジ†

さて,先ほどまでは DF と UB が M2 によりinterchangeableインタァチェィンジャボゥであった訳だが,DF が M' により FU とinterchangeableインタァチェィンジャボゥなことは明らかだろう.そこで,何かしらのパーツを FU へインサート すればよいのだとわかるので,インサート手順を考える.

例.DF → FU → UR

DF-FU-UR

x で持ち替えをすると,FU と UR の位置が,それぞれM2法での UB と BR の位置と相対的に同じになる.従って,U R' U' でインサートすればよいことがわかる.結果として,

[x : M', U R' U']

が得られる.インターチェンジとインサートを行う順序を逆にした

[x : U R' U', M']

を回すと,DF → UR → FU のサイクルとなる.

このパターンに帰着されるものを次の表にまとめておく.

Cycle Insert (to FU) Execution
DF → FU → UR x U R' U' [x : M', U R' U']
DF → FU → UL x U' L U [x : M', U' L U]
DF → FU → FR x R' U R U' [x : M', R' U R U']
DF → FU → FL x L U' L' U [x : M', L U' L' U]
DF → FU → DR x U R U' [x : M', U R U']
DF → FU → DL x U' L' U [x : M', U' L' U]
DF → FU → BR x U R2 U' [x : M', U R2 U']
DF → FU → BL x U' L2 U [x : M', U' L2 U]

この表では,FU へインサートすべきパーツが U, F, B, D面(M列を除く) にあるときの 8 × 2 = 16 通りをカバーできる.

例.DF → FU → RF

DF-FU-RF

RF を FU へインサートするには,U' R U と回せばよい (x 持ち替えをすれば,M2法での RU インサートと同じ) .

[M', U' R U]

を得る. 一つ前の例では x 持ち替えをしたが,ここでは持ち替えをしない方が回しやすいので,どうすれば FU へインサートできるのかを次の表を参考にして考えてもらいたい.おそらくすぐに理解できると思われるので,すぐにものにできるだろう.

Cycle Insert (to FU) Execution
DF → FU → RB U' R' U [M', U' R' U]
DF → FU → RD U' R2 U [M', U' R2 U]
DF → FU → RF U' R U [M', U' R U]
DF → FU → RU R U' R' U [M', R U' R' U]
DF → FU → LF U L' U' [M', U L' U']
DF → FU → LD U L2 U' [M', U L2 U']
DF → FU → LB U L U' [M', U L U']
DF → FU → LU L' U L U' [M', L' U L U']

注意.DF-FU-RU, DF-FU-LU のサイクルに関しては,M2法のときには使っていないインサートをしているが,回しやすいのですぐに覚えられるだろう.

(R U' R' U)' = U' R U R'
(L' U L U')' = U L' U' L

この表では,FU へインサートすべきパーツが R, L面(M列を除く)にあるときの 8 × 2 = 16 通りをカバーできる.

DF-FU-UB パターン

これは少しだけむつかしい.まず D で DF を DR へセットアップし,FU が M' により UB とinterchangeableインタァチェィンジャボゥと見る.そして DR を U R2 U' で UB へインサートすればOK.

DF-FU-UB-1

Cycle Insert (to UB) Execution
DF → FU → UB (D) U R2 U' [D : M', U R2 U']
DF → FU → BD (x D) U R2 U' [x D : M', U R2 U']

これは,2 × 2 = 4 通りカバー.

DF-FU-BD はアジア大会2014でWRCCの森川くん から教えて貰った手順.

†DF-BD インターチェンジ†

ここでは,DF と BD が M によりinterchangeableインタァチェィンジャボゥであることを利用して,コミュテータを生成していく.

DF-BD-UR パターン

DF-BD-UR

x' 持ち替えをすると考えやすい.UR を BD へインサートするには,x' で持ち替えてから U R U' を回せばよい. 結果として,

[x' : M, U R U']

を得る.ちなみにこの DF-BD-UR cycleはTwitterで某3BLD圧倒的日本記録保持者たくくんさんに教えて貰った手順である (神々しい). ここでも,インサートの仕方をよく観察して,ものにしてもらいたい.

Cycle Insert (to BD) Execution
DF → BD → UR x' U R U' [x' : M, U R U']
DF → BD → FR x' U R2 U' [x' : M, U R2 U']
DF → BD → DR x' U R' U' [x' : M, U R' U']
DF → BD → BR x' R' U R U' [x' : M, R' U R U']
DF → BD → UL x' U' L' U [x' : M, U' L' U]
DF → BD → FL x' U' L2 U [x' : M, U' L2 U]
DF → BD → DL x' U' L U [x' : M, U' L U]
DF → BD → BL x' L U' L' U [x' : M, L U' L' U]

この表では,BD へインサートすべきパーツが U, F, D, B面(M列を除く) にあるときの 8 × 2 = 16 通りをカバーできる.

DF-BD-UB パターン

これは U で上の DF-BD-UR の形にセットアップすれば勝確である.

Cycle Insert (to BD) Execution
DF → BD → UB (U x') U R U' [U x' : M, U R U']
DF → BD → UF (U x') U' L' U' [U x' : M, U' L' U]

2 × 2 = 4 通りカバーできる.

DF-BD-RU パターン

DF-BD-RU

この場合は x 持ち替えをするとわかりやすい.ただし,一つ注意をしておくと,ここでは M2法における UB の役割をDF にしてもらい,M2法における DF の役割を BD にしてもらう.図を見れば,x 持ち替えにより DF-BD インターチェンジが FU-DFインターチェンジと同じであることが簡単にわかるだろう (敢えて DF-FU とは書いていない) . x で持ち替えた後,RU を DF へインサートするためには,U' R' U を回せばよい. 結果として,

[x : U' R' U, M']

を得る.この場合は,本質的に DF-FU-RF パターンと同じであるが,サイクルの向きにより一層注意して観察することにより,インサートをものにしてもらいたい. !!!!ここに図を入れろ!!!!

Cycle Insert (to DF) Execution
DF → BD → RU x U' R' U [x : U' R' U, M']
DF → BD → RF x R U' R' U [x : R U' R' U, M']
DF → BD → RD x U' R U [x : U' R U, M']
DF → BD → RB x U' R2 U [x : U' R2 U, M']
DF → BD → LU x U L U' [x : U L U', M']
DF → BD → LF x L' U L U' [x : L' U L U', M']
DF → BD → LD x U L' U' [x : U L' U', M']
DF → BD → LB x U L2 U' [x : U L2 U', M']

この表では,DF へインサートすべきパーツが R, L面(M列を除く) にあるときの 8 × 2 = 16 通りをカバーできる.

†DF-BU インターチェンジ†

このパターンは,今までのものとは異なり,BU が DF とinterchangeableでない(!!!!f*ck!!!!). なので,個別に見ていくことにする...

DF-BU-UR パターン

この場合は2通り考えることができる.一つ目は,Advancedアドヴァンストゥ M2 を使うことによりコミュテータにできる.

DF-BU-UR

すなわち,

[U' : B L' B', M2]

である.しかし,個人的な意見だが,これは B L' B' を回す際に x' 持ち替えをして回す人が多いと思われるので,次のように2手セットアップを行う方がよいと考えている.

[R' F : U' L' U, M2]

このように R' F で持ち替えを行うと,UR が FD に移り,DF が LF に移るので,実質次図のような M2法の場合と同じなのである.また,2手セットアップではあるが,持ち替えがいらない手順で回せるのがよい.

DF-BU-UR2

後者のセットアップと同様のパターンを表にまとめておく.

Cycle Insert (to UB) Execution
DF → BU → UR (R' F) U' L' U [R' F : U' L' U, M2]
DF → BU → UL (L F') U R U' [L F' : U R U', M2]
DF → BU → FR (F) U' L' U [F : U' L' U, M2]
DF → BU → FL (F') U R U' [F' : U R U', M2]
DF → BU → DR (R F) U' L' U [R F : U' L' U, M2]
DF → BU → DL (L' F') U R U' [L' F' : U R U', M2]
DF → BU → BR (R2 F) U' L' U [R2 F : U' L' U, M2]
DF → BU → BL (L2 F') U R U' [L2 F' : U R U', M2]

8 × 2 = 16 通りをカバーできる. DF → BU → DR, DL もこのセットアップのパターンに入れているが,他によい3-cycle手順が作れるのであまりお勧めできない.

DF-BU-RF パターン

この場合は,U2 して DF-FU-RF パターンに帰着させてしまいましょう.

DF-BU-RF

Cycle Insert (to FU) Execution
DF → BU → RF (U2) U' R' U [U2 : M', U' R' U]
DF → BU → RD (U2) U' R2 U [U2 : M', U' R2 U]
DF → BU → RU (U) R U' R' U [U : M', R U' R' U]
DF → BU → LF (U2) U L' U' [U2 : M', U L' U']
DF → BU → LD (U2) U L2 U' [U2 : M', U L2 U']
DF → BU → LU (U') L' U L U' [U' : M', L' U L U']

6 × 2 = 12 通りをカバーできる.

DF-BU-RB パターン

B でセットアップする Advancedアドヴァンストゥ M2 でOK .

Cycle Insert (to UB) Execution
DF → BU → RB (B) U' L U [B : U' L U, M2]
DF → BU → LB (B') U R' U' [B' : U R' U', M2]

2 × 2 = 4 通りをカバーできる.

DF-BU-BD パターン

U でセットアップすると DF-RU-BD パターンと同じになる.

DF-BU-BD

もしくは,x で持ち替えた後に U で DF を LF へセットアップし,BD と BU が D2interchangeableインタァチェィンジャボゥと見る.そして LF を M' U' M で BD へインサートする (ちなみにこの M' U' M 系のインサートはエッジコミュテータで多用するので覚えておくとよい) .

DF-BU-BD2

Cycle Insert (to DF) Execution
DF → BU → BD (U x) U' R' U [U x : U' R' U, M']
DF → BU → BD (x U) M' U' M [x M : D2, M' U' M]

2通りカバーできる.

† 発展 (M2法の範疇からは外れてしまうモノたち) †

DF-FU-DB パターン

U で FU を LU へセットアップし,DF と DB が D2interchangeableインタァチェィンジャボゥと見る.そして LU を M' U' M で DF へインサートする.

DF-FU-DB

Cycle Insert (to DF) Execution
DF → FU → DB (U) M' U' M [U : M' U' M, D2]
DF → BU → DB (U) M' U M [U : M' U M, D2]

2 × 2 = 4 通りカバーできる.

DF-BU-UF

これはWRCCの森川くん から教えて貰った手順.

y で持ち替え,DF と UF が L2interchangeableインタァチェィンジャボゥと見る.そして BU を U M' U' で UF へインサートする.どうです,かっちょいいでしょう

DF-BU-UF

Cycle Insert (to UF) Execution
DF → BU → UF y U M' U' [y : U M' U', L2]

2通りカバーできる.

DF-FU-BU

これは U でセットアップし,DF-LU-RU の形にする.y' で持ち替え,LU と RU が U2interchangeableインタァチェィンジャボゥと見る.そして DF を M D' M' で LU へインサートする.

DF-FU-BU

Cycle Insert (to LU) Execution
DF → FU → BU (U y') M D' M' [U y' : M D' M', U2]

2 通りカバーできる.

注意.この手順はキャンセルが起きるので,それも含めてモノにしたい (後で触れるが,これは3BLDだともっと良い手順が作れる) .DF-FU-BU サイクルでは,

U y' M D' M' U2 M D M' U y

となり,DF-BU-FU のサイクルでは,

U' y M D M' U2 M D M' U y'

となる.このようなキャンセルは他にもあるので,自分でコミュテータを作りながらモノにしていってもらいたい.

†おわりに & 謝辞†

これまで,f*ckなM列サイクルたちを華麗にコミュテータに変身させてきた.その数実に

114

通り.強い[確信].

やったねたえちゃん!!

今回紹介した手順が speedスピード optimalオプティマル とは限りません.まだ 3-style に移行していないマンは,M列だけでなく,他のサイクルでも君だけの手順を作れ!

今回この記事を書くにあたり,WRCCの知識番長森川くん と MBLD圧倒的NR保持者しおやん に誤植の指摘や貴重なアドバイスをいただいた.どうもありがとう.

また,Speedcubing Advent Calendar 2014を企画してくださった荒木慎平さんに感謝する.

私はBLDが好きだ.ある圧倒的な者がこう言っていた.

朝起きた時に今日も一日BLDをやるぞと思ってるようでは,とてもものにならない.BLDを考えながら,いつのまにか眠り,朝目が覚めたときは既にBLDの世界に入っていなければならない.どの位BLDに浸っているかが,勝負の分かれ目だ.BLDは自分の命を削ってやるようなものなのだ.

(ここまでやる気はない)

最近,日本の大会でのBLDのレベルが急上昇しているように感じている.個々人が知恵を絞り,未開のまま横たわっている多くの3-cycle手順を作り出していくことを期待している.本記事がそのための刺激となれば,筆者の望外の喜びとするところである.

2014/12/20 WRCC blindfolded chief adviser
天国超越のミサワ (TwitterID : ccccccccandy)
A. Misawa

†オマケ (M列以外だけどよく使うエッジコミュテータたち)†

ここでは,パターンを紹介するが,表などは作らず一例を挙げるのみに留めることにする.読者自ら手順を作成されたい.tips的サムシングである.

なんかよくわからないけど使えるやつ

D面インターチェンジ

DF-DR-RU パターン

DFとDRが Dinterchangeableインタァチェィンジャボゥであり,RUを M' U M でDFへインサートする.

DF-DR-RU

R面インターチェンジ

F面インターチェンジ

E系インターチェンジ

これは,筆者が E で回せないため, z 系で持ち替えて M 系インターチェンジと捉えている.

S系インターチェンジ

これまたなんか変なやつ

さきほど後で触れると書いたものについて,この辺りで触れようと思う.

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